第6回 岡大サイエンスカフェ開催報告 

開催日時:平成20年1月24日(木) 18:00〜19:40

開催場所:岡山大学創立五十周年記念館 大、小会議室

テーマ :海のちから
      ─生命のふるさと、資源の宝庫、そして気候変動の主人公─


講 師 :岡山大学大学院 自然科学研究科(理学系)本水 昌二教授


開催概要

 
最初に稲葉副学長から「岡山大学には約1350名の教員がおり、皆さんには地域のコミニュティとして大学を利用していただきたく、サイエンスカフェの催しも社会連携の一環として行っているもので、今後理科系のみならず文科系の話題もテーマとして取り上げていきたい」との挨拶がありました。挨拶の中で、本日の講師である本水先生が大学図書館の副館長であることから図書館の紹介があり、250万冊の蔵書、なかでも池田家文庫の素晴らしさを強調されました。

 以下は本水先生のお話です。

 先ず自己紹介では、ご自身のお生まれが、たまたま前回のサイエンスカフェのテーマであったベンガラの産地、県内成羽町であり、そこではベンガラのみならず奈良の大仏にも使われた銅の生産や、民俗芸能としての備中神楽などのお国自慢もされました。先生のご専門は分析化学であり、微量分析化学技術を用いて半導体、液晶処理剤のモニター計を開発してきた。また、カニ、エビの甲羅から取れるキチン、キトサンを原料として「海から金属を回収する研究」を行ってきたが、本日の「海のちから」の内容は少し大きなテーマになったかなとの前置きがありました。
 事前に配布された資料についての説明がありました。
元素周期表:化学の専門家として「一家に一枚周期表運動」を推進しており、各家庭で科学に関心を持って貰いたい。国内のノーベル賞受賞者の写真も掲載されている。
藻塩:海水そのものを濃縮した塩で、ミネラル分はじめ栄養分が豊富である。ボランティア活動をしている知人に急遽間に合わせて貰った。
池田家文庫の絵葉書:副学長からも紹介あった大学図書館所蔵の池田家文庫の資料を絵葉書にしようとの企画が岡山大学出版会で持ち上がり、本日間に合った経緯の説明があった。
なお、池田家文庫のなかから御座船などの絵図、産物帳から魚などの海に関する絵図等の紹介があった。

 次いで先生のご研究内容の紹介がありました。

 知の創造としての大学の役割と、それを製品化する企業との産学連携を分析化学の分野で推進してきた事例紹介として、いくつか説明がありました。
 先ず、世界的な競争力を持つ鉄鋼産業では、鉄に含まれる微量物質の分析、制御が極めて重要で、例えば1910年代のタイタニック号沈没事件では、当時は全く理解されていなかった脆性破壊と硼素の関係が、今では完全に解明されており、この硼素の微量分析技術については「世界一」を自認している、との自己PRもされました。
 また半導体製造における金属汚染防止のための微量金属のモニターをフローインジェクション方式で高精度化、コンパクト化した分析装置も先生が開発され多く利用されているとのことです。
 その他、イオン会合反応を利用して水溶液から金属を捕捉する試薬の開発、地球温暖化の原因であるCOを正確に測る装置の開発も先生の研究成果です。
 ついつい話が長くなり、時間経過を気にしながら休憩に入り、休憩期間には先生に個人的にいくつかの質問がなされました。

                                     

 再開後は本日のテーマである「海」について、45億年前の地球の誕生、38億年前の海の誕生から始まり、20億年前に酸性の海で誕生した生物は、植物の光合成で作られた酸素が太陽光線によりオゾンとなり紫外線がカットされたことで、5億年前から陸上に生息圏を拡げた、等の大きな流れの話がありました。
 その後の生物の進化を経て人類の出現は約450万年前であり現在に至っているが、海がいのちの源であることは、海水の成分と血液の成分に類似性があることから窺い知る事ができる。

 たまたま最新情報で、本学の地球物質科学研究センター(三朝地区)から、地球生成期にあった大量の水の行方について、地球深部のマントルに蓄えられているのではないかとの従来からの学説を覆す研究成果が発表されたとのニュースの紹介がありました。
 海水に溶け込んでいる元素として、塩素、ナトリウムはじめ約80種類のリストが示され、その中の微量の金属を取り出すことを研究対象とし、中でも将来のエネルギーの中核となる原子力発電に必要な「ウラン」を海水から取り出す試薬については特許出願を行っており、それに用いるのはキトサンでカニ、エビの甲羅から抽出できるキチンを原料とするものである。
 水の分子(HO)同志は水素結合によりクラスターと呼ばれる結合をしており、室温では約60%が結合状態にある。その結合の中にメタンを取り込んだ状態がメタンハイドレートと呼ばれるもので、低温、高圧になるほど安定している。海底でのメタンハイドレートは日本近海でも多く存在し、次世代のエネルギー源として期待されている。
 人類が作り出した地球規模での変化として問題になっている温暖化現象は、主にCOの増加に起因するものであり、世界各地、日本各地での100年間の気温変化を見ても明らかである。人間活動に伴って放出されるCOの年間収支と、今後のCO排出量の見通しに併せ、CO増加 が原因で海洋の酸性化が進行し、海水中に炭酸カルシウムが溶解することによる危機の説明があった。それによれば海水は酸性化の方向に進み、最初は表層近くでの変化だが時間経過であらゆる水深で影響が現れる。今後の変化予想も示された。
 「海のちから」の最後に、キチン、キトサンの効用についてのお話がありました。抗菌剤、抗癌剤としての薬品、抗コレステロール剤としての健康食品、保湿剤としての化粧品、植物活性に有効な農薬の他に、水中等の微量物質を捕捉する作用の活用が期待されています。排水、海水などから有用資源の回収と汚染水からの有害物質の除去であり、中でも前にも触れた海水からのウランの回収および汚染水からの水銀等の有害物質の分離・濃縮・捕集は最も期待されるものであり、今後の研究の意気込みが示されました。

 予定時間が少しオーバーしましたが、お話の後参加者からの質問にも丁寧にお答えいただきました。閉会に先立ち、次回サイエンスカフェの予定として、文学部松木武彦先生の「遺跡で読む古代人の心と社会」の案内が遠藤センター長からアナウンスされました。

 当日は朝から小雪が舞い散る寒い日でしたが大勢の皆さんにお運びいただき盛況に終えることができましたこと、参加者の皆さん、学内関係者の皆さんに厚くお礼申し上げます。




                                               社会連携センター 松浦 啓克 記



(以下サイエンスカフェの様子)

































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