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サイエンスカフェ

第22回 岡大サイエンスカフェ開催報告

開催日時

平成23年2月23日(水) 18:00~19:45

開催場所

岡山大学創立五十周年記念館 2階

テーマ

素粒子と宇宙 
~原子を利用して宇宙の謎に挑む~

講 師 岡山大学・極限量子研究コア 
笹尾登教授(素粒子物理学)
看板の写真

開催概要

 冒頭、曽良副学長から「サイエンスカフェではこれまで化学・機械・生物・考古学・文化など様々な分野をテーマにしてきましたが、今回の宇宙物理ははじめてで、これまでで最も多くの方に参加いただく事になりました。講師の笹尾先生は、大学として重点的に取り組む研究分野に新たにお迎えした先生で、お話を楽しみにしています」との挨拶がありました。

曽良副学長の挨拶

 以下は笹尾先生のお話です。
 最初に、「素粒子物理学の実験分野の研究者として、ノーベル物理学賞を受賞した小林・益川模型に関連する実験研究を続けてきた。2年前に新しい研究が推進できる現在のポストに赴任しました」との自己紹介のあと、画家ゴーギャンの絵「我々は何処から来たのか、我々は何者か、我々は何処に行くのか」を背景に、本日のテーマ「素粒子と宇宙」に関する説明がありました。

笹尾先生

 「太陽系内に存在する水素やヘリウムなどの軽元素は殆ど宇宙開闢数分間に作られたが、炭素以上の原子量の原子は長い年月の後、星のなかで作られた。ここ10年ほどの間に判明した驚愕すべき事実として、宇宙のエネルギー組成はダークエネルギー・ダークマターが大部分を占め、我々が認識できる物質は僅か4%しかない事がハッブル望遠鏡を始めとする宇宙観測により判明した。また宇宙創生期には物質と同量あった反物質は、現在10ー10程度以下しか存在しないと考えられているが、その理由もおぼろげながら明らかになってきた。宇宙も素粒子の世界でも事実が判れば判るほど更なる謎が深まり、答えられない事の方が多い。」との話から始まりました。

 「本日の話では、前半に『量子の世界』後半に『宇宙の謎』を取り上げるが、特に『素粒子物理と宇宙物理の深い関連』『量子は粒子と波動の2重性を持つ(量子の干渉性)』『科学を楽しむ』の3点が眼目であり、量子の2重性を理解して貰って、間に行う実験でそれらを確かめつつ楽しんで貰えれば」との前置きをいただきました。
 続いて「高校教科書にもあるウロボロスの蛇の図に象徴されるように、人のサイズよりも10-15も小さい素粒子の世界と、1025も大きい宇宙が深く関連づけられる。全ての粒子は、粒子性と共に波動性を併せ持つことをド・ブロイは提唱したが、現在この事実は数多くの実験で確かめられている。」と説明された。

 その後「鐘のうなり音」や「石鹸膜の虹色」でも身近に経験する波の干渉性について、会場での実験として、ポインターのレーザー光を使って2重スリットを通過した光の干渉による縞模様が示され(ヤングの干渉実験)、併せて参加者に事前に配布された簡易分光器によるスペクトルの体験が行われ、皆さん一斉に分光器を天井の照明に向けて確認しました。分光器では蛍光灯、白熱灯、水銀灯、Naランプ等でそれぞれ異なるスペクトルが観測できる。

スペクトルの体験

 人間の目は数個の光子でも検知出来る程感度がよい事、光の粒子性についても簡単な実験で確かめられる事、粒子としての光である光子は1個だけでも波動としての特長を持つ事、同時により大きなサイズの原子や分子でも波動の性質を有する事(量子干渉性)、この性質を利用して原子を用いた干渉現象から宇宙の謎に挑むのが先生の研究テーマの一つです。
 休憩前に、分子-原子-陽子-クオーク等の物質階層、自然界に存在する4つの力(重力、電磁気力、原子核内の強い力、弱い力)、エネルギーと長さの関係およびエネルギー単位としてのeVの説明があって、休憩に入りました。

 休憩時間中に、先生に個別にいくつかの質問があり対応いただきました。
再開後最初に、如何にして物質のみが残存したか、反物質はどこに消えたかの説明をしたいが、これらはいくつかのシナリオあるもののまだ答えを持っていないのが実情である。どのシナリオにおいても、荷電及び空間対称性(CP対称性)または時間反転対称性(T対称性)の破れが本質的役割を担っている。クオークにおけるCP対称性の破れは小林・益川理論として有名であるが、これだけでは宇宙の反物質消滅の説明はできないとされている。
 宇宙開闢10-6秒後までには反物質は消滅したと考えられているが、この間クオークではなくレプトン、特にニュートロンが主要な役割を果たしたとの説が有力になっている。

ニュートリノはレプトンの仲間で、宇宙のなかで光子に次いで多く存在する。不思議なことに他の粒子(クオークや荷電レプトン)に比べ非常に軽い。また自身が反粒子になる(マヨラナ粒子と呼ぶ)可能性も有力であり特異な粒子であるとのことである。先生は、原子の量子干渉性を用いて原子から放出されるニュートリノを検出し、実験によって宇宙開闢から10-30秒後の世界を解明しようとする、夢のある研究への取り組みの紹介で締めくくっていただきました。

 質問タイムには、下記質疑がありました。
1、光子について:重さは基本的にはゼロ、もし有ったとしても10-54kg以下
2、光子の反粒子:光子は物質とは異なり力を伝達する粒子で、自分自身が自らの反粒子である(ボゾンと呼ぶ)
3,ニュートリノの語源:ニュートロン(中性の粒子)の語尾を「小さい」に変えたもの

質問応答

 閉会に先立ち、次回第23回の案内が司会者からアナウンスされました。
閉会後も数多くの個別の質問があり対応いただきました。

  質問をされるみなさん

 今回は、多くの皆さんに参加いただき会場が少し窮屈でしたが、盛況に終えることができました事、厚くお礼申し上げます。            

社会連携本部 松浦啓克記