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サイエンスカフェ

第21回 岡大サイエンスカフェ開催報告

開催日時

平成22年12月10日(金) 18:00~19:30

開催場所

岡山大学創立五十周年記念館 2階

テーマ 「仕事とケアの両立」という生き方 
~オランダ流ワークライフバランス~
講 師 岡山大学大学院社会文化科学研究科(文学部) 
中谷文美教授(文化人類学)
看板の写真

開催概要

 冒頭、曽良副学長から「サイエンスカフェの開催は昨年から年6回開催していますが、どちらかといえば自然科学系の話題が多いなか、今回は文化科学系の中谷先生の話です。日本社会は相当成熟していますが、欧州、特にオランダの実情の話しを楽しみにしています。」との挨拶がありました。
 以下は中谷先生のお話です。
曽良副学長の挨拶

 最初に、専門の文化人類学が「自分自身が生まれ育った所でない地域の人達の生活、考え方、行動等について調べる」学問であること、インドネシアのバリ島が自身のフィールドワークの場所であり2年間生活・調査して、このバリ島での調査をまとめるために半年程オランダで過し、その時に得られた情報が今日の話の内容であるとの、自己紹介を兼ねた説明がありました。
 今日のテーマにある「ワークライフバランス」の言葉を聞いた事があるかの質問については、参加者の1/4ほどの挙手がありました。

  講演の様子

 ワークライフバランスは「仕事と生活の調和」のことで、我が国ではH18年の厚生労働白書で、働く人のワークライフバランスが取り上げられ、H19年には働く人の基本的方向の中間報告として、「自らが希望するバランス」を取り上げ、仕事の充実と仕事以外の生活の好循環を指摘しているが、これは実状がバランスの取れていないことの表れでもある。 ワークライフバランスのポイントとして下記3点が示された。

1、あらゆる人のためのものである
2、人生の各段階に応じて、希望するバランスを決めることができる
3、仕事の充実と、それ以外の生活の充実との好循環をもたらすものである
 オランダが研究対象となったのは、過去にはオランダがインドネシア(バリ島)の植民地宗主国であったとの歴史が背景にあり、先生が最初に訪れた2002年当時、4才のご子息を「日本では両親が働いている場合、週5日保育園に通わせる事が当たり前である」ことに同世代のオランダ人が非常に驚いた事が最初のキッカケになった。
 当時日本では少し前の1990年代からワークシェアリングが話題になっており、その先進国のオランダに関心が示され、政府関係者や労組等の視察団が数多く訪れていた。
 労働環境に関し、2000年当時日本とオランダの圧倒的な違いは、週50時間以上労働者比率が、日本が28.1%とダントツに高いのに対し、オランダでは1.4%であり、実情はフルタイム勤務よりパートタイム労働が多く、残業は悪との通念があるほどであった。
 生涯を通じた女性の働き方を示す年齢別労働力率を示すグラフでは、日本は30才代に結婚・出産・育児による落ち込みが表れるM字型カーブが顕著であることに対し、オランダではその傾向が少なく、年齢が上がっても仕事を続ける傾向と、年代とともに労働力率全体が上昇していることが示された。
 この後スライドで、風車、運河が多い街並み、運河に繰り出されるマイボート、自転車やリヤカー形式の子供を乗せる車、運動会、仮装行事、学童保育所、住宅の窓辺風景、小学生の弁当や朝食、昼食セット等それぞれエピソードや解説を交えてオランダの風景、生活の一端が示された後、休憩時間となりました。

 休憩時間中に、先生に個別にいくつかの質問があり対応いただきました。

 再開後、後半はもう少し学問っぽい感じの話です、との前置きで、最初に1625年に出版された本の挿絵(家族の風景)が紹介され、そこから男性は公的・外的、女性は家庭内という役割分業、棲み分けがすでに、はっきり分かれている事が判る。
休憩時間
 1950年以降のオランダ女性の労働事情変遷として、以下の説明があった。
・黄金4半紀といわれる戦後好景気を背景とする、既婚女性は専業主婦という社会規範
・1960年代後半からのサービス業等へのパートタイム労働への女性の参画
・1970年代には女性の労働力が求められ、1973年には結婚・出産を理由とする解雇の禁止を法制化 ・1980年代からの福祉国家に向けた女性の労働参加上昇(背景には労働市場の変容と新たな保育政策)
・1982年、不景気を背景としたワッセナー合意(賃金抑制、ワークシェアリング、減税、社会保障負担に基づく政労使3者の合意)以降、女性の労働市場参入の急増
・1996年の労働法改正を経て2000年労働時間調整法によって、従業員が希望する労働時間を使用者に申し出る事ができるようになる
会場のみなさん

 これらの結果、パートタイム労働者の比率はEU諸国内でオランダがダントツに高く(女性76%、男性23%/2009年)、現在は圏内各国ともパートタイム労働を奨励している。
 この後、先生がオランダでインタビューした具体的事例として、銀行勤めの夫婦、妻が弁護士の夫婦の説明があり、いずれもライフステージの変化や子供の成長に合わせた労働条件選択の多様性が特徴的である。

 これらの背景には、女性が長く労働できるように学童保育の拡充等の政策・社会情勢の変化があり、女性自身は、専業主婦もバリバリ働くのもイヤという文化のなかで、仕事とケアの両立をめぐって勝ち取った権利としてのパートタイム勤務により、「両立する女」が理想として認識されて現在に至っている。
 男性は企業の中心、女性はパートタイムとして、ライフの中にワークがあり、その間に子供のケアを含めたバランスをとるという「仕事とケアの両立」を目指すオランダ人の生き方の紹介をしていただきました。

質疑応答
 質問タイムには、下記2件についての質疑がありました。
1、親の介護とのバランスについて:オランダでは親は子供の世話になりたくないとの意識があって、同居はなく近くに居住する程度で、福祉施設は充実しているが、女性が主として介護を担う状況は日本と変わらない。

2、病院の治験に積極的なオランダ:ドラッグ、売春、安楽死、同性愛者の結婚等が合法化とのリベラルな性格や、自分と違う他人の行動を認める国民性から見て、意外ではないとの印象。

  最後に、次週同じ会場で開催される「男女共同参画シンポジウム」の紹介および参加の呼びかけが、主催者側の一員である中谷先生からありました。

閉会に先立ち、次回第22回の案内が司会者からアナウンスされました。
 今回は、師走の寒い中多くの皆さんに参加いただき盛況に終えることができました事、厚くお礼申し上げます。                   
             社会連携本部 松浦啓克記

会場のみなさん