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サイエンスカフェ

第19回 岡大サイエンスカフェ開催報告

開催日時 平成22年8月19日(木) 18:00~19:40
開催場所 岡山大学創立五十周年記念館 2階
テーマ むし歯は感染症 
~最新のむし歯治療と接着歯学~
講 師 岡山大学大学院医歯薬学総合研究科 
吉山昌宏教授(歯科保存修復学)
サイエンスカフェ看板の写真

開催概要

 冒頭、曽良副学長から「むし歯は大抵の人が関係しており、自身は旧来の方式で治したが、今日は新しい治療方法の話しが聞けます。講師の吉山先生は近々NHKテレビ番組『ためしてガッテン』に出演されます。」との放映予告(9月22日水曜日PM8:00~)を含めた挨拶がありました。
曽良副学長の挨拶
 以下は吉山先生のお話です。  
 最初に、出身は神戸で、徳島大学を経て10年前に岡山大学に赴任したとの自己紹介がありました。
 むし歯に関する歴史をたどると、13世紀、欧州の魔女狩り時代には、歯の中には神経と一緒に魔女が住むと考えられ、その絵画が残されている。さらに南米ペルーに残された11世紀頃のミイラの歯には、治療の跡や装飾の痕跡まである。  
 歯の構造は、表面のエナメル質とその内側の象牙質、中心部には神経、細胞、血管を含む歯髄で構成されており、むし歯は表面からのう蝕の進行度合いでC0~C4に分類される。 エナメル質は約99%のリン酸カルシウム(アパタイト)で構成され、表面の美しさを保ちダイヤモンドに次ぐ硬さがある。象牙質は約60%のアパタイトと約20%のコラーゲンにより、若干の弾力性がある。象牙質にはその詳細解明の命題が残されているが、mm2当たり3万もの象牙細管があり「しみる」原因になっている。この「しみる」感覚は冷たいものに対してならまだ軽度と言えるが、暖かいものにしみるのは象牙質への侵食が進行していると判断される。
会場の様子
 むし歯菌の大きさは1μ程度で、治療しても特に歯と歯の間等での完全除去が難しく、やり直し治療(2次う蝕)が問題となっている。  
 むし歯治療は1970年代には水銀、銀から成るアマルガムを使用していたが、現在では水銀汚染の問題で使われていない。まだ海外ではアメリカでも多く使われ、中国では中心的に使用されている。
 旧来の技術では、マイクロモーターやエアタービンを活用して、むし歯部分を大きく削って旨く神経をとる事が主体であったが、最近は「う蝕検知液」を使って最小限範囲を切削するようになってきている。  
 むし歯の原因となる菌の中で代表的なミュータンス菌は、生後2歳半頃から生息し始め、ショ糖、澱粉等により歯垢(プラーク)をつくり、そのまま24時間以上経過すると硬い歯石になってしまうので、3ケ月毎の歯石除去(スケーラ)の推奨があった。むし歯菌には他にも多くの種類があり、それぞれが連携して複雑な動きをすることが最近の研究で判ってきた。
 むし歯のきっかけになる歯の表面の「脱灰」に対しては、それが小さい時には再石灰化により修復されるが、それにはフッ素が効果的であり、また唾液は防蝕作用、抗酸化作用があって再石灰化に効果的である(スーパー免疫力)。中高年以降のむし歯は唾液量の減少によるのではないかとも思われる。
 フッ素にはアパタイトの耐酸性の向上の作用があり、歯磨きに含まれるフッ素含有量は、日本では規制により950ppmが上限だが、アメリカでは2000ppmのものもある。また水道水にフッ素を混入しているのは日本では一部(宝塚、新潟)だが、アメリカでは多くの地域で運用されており、そのせいか硬い歯の人が多い。
吉山先生
質問される皆さん
 臼歯の噛み合わせ面の溝の深さは個人差があり、それが深い場合はむし歯になり易いので「シーラント」により埋める治療法もある。

ここで休憩に入り、その間に実際に歯を診て頂いたり、治療方法のアドバイスを受ける高校生もおられました。
 再開後、お歯黒の話から始まり、それにはフッ素、銀が多く含まれむし歯予防に効果がありことが判っており、それに相当するものとして現在では、サホライドが使われている。 アメリカでは「ハリウッドホワイト」言われるくらい、白い歯は命との価値観があって、かなりキツイ漂白剤まで使っている。
 江戸時代の日本では、貝原益軒が養生訓で「豚の毛の歯ブラシを使って塩水で磨く」と理にかなった説明がなされている事、華岡青洲が全身麻酔を行った事、入れ歯の材料として、ツゲの木や動物の骨が使われていた等の話しがありました。
会場の皆さん
 最新の治療技術として、インプラント方式の問題点に加え、接着歯科技術の紹介がありました。
1、象牙芽細胞:成長ホルモンを用いて培養し、再生能力を促すもの
2、3ミックス:粉末の抗生物質をセメントに混ぜた充填剤 県内では歯科の3分の1程度が実施してい るが、成功率50%程度 抗生物質の耐性化の懸念が残されている
3、抗菌性レジン:抗菌性モノマー(MDPB)を使用した削らない治療法           
(すでにクラレメディカル社より販売されている)

 最後に、著名人の多くが何らか形で歯を補修して美しく見せている事例の紹介がありました。これらは少し高価だがラミネートベニヤ法、コンポジットレジン等による接着技術を用いた審美治療であり、これからのむし歯治療は、「最小限に削って接着剤で審美的に治す」という事が原則になるでしょう。 加えて、接着技術にして岡山県は先進的である、との紹介をいただきました。  
質疑応答
 質問時間には、数人の皆さんからの質問に答えていただき、最後に先生から「皆さんのお口の健康を願っています」とのお言葉で締め括っていただきました。
 
閉会に先立ち、次回第20回の案内が司会者からアナウンスされました。
 今回は、猛暑の中多くの皆さんに参加いただき盛況に終えることができました事、厚くお礼申し上げます。

社会連携本部 松浦啓克記