第15回 岡大サイエンスカフェ開催報告
| 開催日時 | 平成21年12月22日(火) 18:00~19:40 |
| 開催場所 | 岡山大学創立五十周年記念館 2階 |
| テーマ | グルタミン酸 うまみだけじゃない! |
| 講 師 | 岡山大学大学院医歯薬学総合研究科(薬学部) 森山 芳則 教授 |
開催概要
冒頭、曽良副学長から「本日のテーマうま味が100年前の明治中頃、池田菊苗により発見され、出願された特許出願番号が14805号であることから、その時代にも如何に多くの発明・発見が行われていたか、また日本の10大発明に数えられるこの「味の素」、御木本幸吉の真珠、豊田佐吉の自動織機、高峰譲吉のジアスターゼ、鈴木梅太郎のビタミン等がこの時代に生まれ、現在も日本企業の中核になっていることは注目されます。
岡山大学も新制大学となって60年を迎え、本日のサイエンスカフェも大学の使命である社会貢献の一つでありますので、大いに楽しんで下さい」と挨拶がありました。
以下は森山先生のお話です。
本日は研究成果を交えて、日本人の根底に流れる味覚の歴史と科学、味覚に関係するグルタミン酸なるアミノ酸は味覚だけでなく、人間の精神活動、更には骨密度にまで関係し、新しい医薬の分野への応用についての話をします、との前置きがありました。
先生は岡山大学卒業後、大阪、東京、米国等約20年間各地を転籍し10年前岡山に戻ったが、この間、遺伝子・タンパク質をテーマに、現在も学生の教育および研究を続けているとの自己紹介でした。
味覚の種類は基本味として、甘味、塩味、酸味、苦味、うま味、えぐ味(2年前に加えられた)の6種類あり、辛味、渋味は刺激としての分類となる。
本日のテーマであるうま味には、アミノ酸系のグルタミン酸(昆布味)と核酸系のイノシン酸(鰹節味)、グアニル酸(帆立味)があるが、グルタミン酸は100年前に池田菊苗、その後イノシン酸はその弟子、グアニル酸は孫弟子により発見され、いずれも日本人であることは注目される。
池田菊苗によって発見され、翌年鈴木三郎助によって商品化された味の素の歴史的背景を、㈱味の素が創業100周年を記念して製作した映画のダイジェスト版の上映があり、
映画の末尾には、2000年には旨みにのみ反応する物質、2006年に胃にも味覚の受容体があることの発見、2008年に世界の一流シェフが料理に旨みを採用した等の最新の情報もありました。
旨みなる言葉は今や外国語辞書にも載り世界共通語であり、世界各国の美味しいものにはいずれもグルタミン酸が含まれ、旨みが国際的なものになって、㈱味の素は工場の世界展開を拡げている。
旨みを感じるメカニズムは、舌にある乳頭に、味を感じる味蕾と呼ばれる数十個の細胞の塊りがあり、そこから受容体と呼ばれる蛋白質に信号が送られ、神経を経由して脳に伝達される。
休憩のあと、後半は旨みでない話です。
グルタミン酸が神経の信号伝達に使われ、人間の精神活動、反応全てに関わっており、それが体の各所に存在することを15年前に森山先生が発見し、そのグルタミン酸を運ぶタンパク質を小胞型グルタミン酸トランスポーターと命名した。どの研究分野にも大勢の研究者がいるが、その分野で人のやっていない独創的なことをやって、研究のトップに立つ独自の研究を目指す、のが先生の研究姿勢である。
次に、骨にあるグルタミン酸についての話になり、破骨細胞には塩酸によって骨を溶かしそれを飲み込んで最後には吐き出す働き(トランスサイトーシス)があり、そこにはグルタミン酸が関与し、トランスポーターが存在していることを、実験により発見した。この過程でグルタミン酸が反応を抑え、造骨細胞とのバランスをとっていることも判った。この働きは、例えれば坂道を下る自転車のブレーキの役目と同じである。
さらに、破骨細胞を破壊し人工的に骨粗鬆症を発症させた動物実験でもグルタミン酸が骨の溶解を制御していることを確認し、現在骨粗鬆症予防薬の開発が進行中である。この研究を紹介する新聞記事で、見出しに表現されていた「うまみだけじゃない」を本日の話のタイトルに拝借したとの裏話がありました。
グルタミン酸による信号伝達の働きとして他にも、糖尿病に関係する血糖値を制御するインシュリンの分泌、一日のリズムを司るメラトニン、白血球が傷に集まる機能等を含め体中の色々な部分に関与している。加えて痛み、てんかん症状への関わりとしての効果もある。てんかん患者数は世界で1億人を超え、その1/3は薬の効果なく外科的治療しか対応できていない。かってヒポクラテスの時代にはこの治療に断食が知られていた。それは飢饉の地域には患者が少ないという事実があり、飢餓によって発生する物質が、痛みを和らげることも知られている。
世界で唯一ヒトのトランスポーターを使いたいだけつくることができる研究室としての利点をいかして、「物質X」を発見した。これは飢餓状態である物質が増え、それがグルタミン酸の輸送を阻害し、伝達信号をOn-Offし、てんかんの治療、痛みの緩和を助ける物質で、画期的な基礎応用研究を展開中である。
最後に、特に参加の高校生向けに森山先生が考えているサイエンスとは?の話。
専門のある分野を研究すると、その分野は調べ尽くされ全て解明したように思うが、ある時壁がとれ次なる課題が出てくる。この繰り返しで行けども行けども課題が表れる。これはザクロの実の中身のようでもあり、別の例えでは山登りで、目前の小さな目標の向こうには更に大きな目標が現れ、次々と山を超えたくなることに相当する。これがサイエンティストの醍醐味ですよ、とのエールで締めくくられました。
この後、参加者からのいくつかの質問にお答えいただき閉会となりました。
閉会に先立ち、次回第16回の案内が司会者からアナウンスされました。
今回は冬至に当たる寒い日で、大勢の皆さんにお運びいただき盛況に終えることができました事、厚くお礼申し上げます。
社会連携本部 松浦啓克記

入口案内ボード
曽良副学長の挨拶

森山先生

まずは(株)味の素制作映画の上映

森山先生のお話
グルタミン酸について

かわいい参加者

会場の様子

質問コーナー

質問に答える森山先生


