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サイエンスカフェ

第14回 岡大サイエンスカフェ開催報告

開催日時 平成21年10月22日(火) 18:00~19:30
開催場所 岡山市デジタルミュージアム 4階 講義室
テーマ 麻酔を科学する ─ 人体の不思議をさぐる─
講 師 岡山大学病院長(理事) 
大学院医歯薬学総合研究科 教授 森田 潔
(専門:麻酔・蘇生学)

開催概要

  最初に、曽良副学長から「本日は、岡山大学の創立60周年の記念日にあたりますが、講師の森田先生所属の医学部の歴史は140年近くになります。大学はこれまでに地元の皆さんに支えられて来ましたのでサイエンスカフェはそのお返しをする機会と理解して定期的に開催しています。本日のテーマである麻酔は経験された方もおられると思いますが、詳しくはよく判らないのでお話が楽しみです。」と挨拶がありました。 以下は森田先生のお話です。


  冒頭、この岡山で生まれ育ち、ここ30年以上麻酔を専門に関わってきた、との自己紹介がありました。次いで参加者の皆さんに全身麻酔の経験の有無をお聞きになり、約半数が挙手され、全国で毎年行なわれる約500万件の手術のうちその半数で全身麻酔が適用されているデータとの符合の説明がありました。
  医学部の歴史が来年140周年を迎えるに当たり、150周年に向けた10年間に各種イベントを予定しており、これまでに卒業生数は11,300名が巣立ち全国でも類を見ない規模で、ここ中四国に止まらず世界レベルの医師を目指していることを強調されました。
ご専門の麻酔科の歴史は、産科の120年等に較べ、40数年と短い。
 「麻酔」と言う日本語は1840年頃杉田成郷(玄白の子孫)が作り、漢字圏の中国、韓国でもそのまま使われている。一方英語ではアネステシア(知覚が無いの意)で日本語とは意味合いが異なる。
 外科的手術で、痛みをとる手段として、最も古くは「頭を叩いて脳震盪」との文献もあるが、1800「年代に科学的な麻酔薬として笑気(NO)が鎮痛の他、多幸効果で使用された。
  笑気は麻酔作用が弱く、歯科医の公開実験での失敗の例もあり、その後エーテルが使われるようになり、公開実験でも成功している。さらにクロロホルムがビクトリア女王の無痛分娩に使われ、この辺りから麻酔科専門医の登場となる。
 それより前に日本では1804年に華岡青州が朝鮮アサガオ他7種の薬草から作った麻酔薬で、乳ガンの手術に成功(以降150例の成功)しているが、秘薬として中身を公にしていない為世界で長い間認められていなかったが、最近やっと欧米で認められるようになった。
 そもそも麻酔には以下の3要素があり、それぞれの神経作用、脳の働きとの関係として、

  • 鎮静:意志決定能力を失わせる
  • 不動:生命維持能力 〃
  • 無痛:生体防御能力 〃

これらの事は言葉を換えれば一人では生きていけない状態、即ち「命を預ける」を意味する。
  また麻酔には普遍性(誰にでも効果をもたらす)、可逆性(必ず元に戻る)が必須であり、あくまでも手段であって目的ではない。
  麻酔に似た状態として、睡眠、冬眠があるが決定的に違うのは、麻酔がかかるのはその間時間が全くなくなった状態であり、動物の世界での環境に合わせた冬眠を麻酔に応用出来ないかの研究する科学者もいる。
 現在使われている麻酔薬として代表的なものは、

  • 笑気:臓器傷害は少ないが、環境問題で敬遠気味
  • エーテル、クロロホルム:引火性高いが、人体への安全性は高い
  • セボフルレン:かかりやすく、醒めやすいので最も多用されている

等があり、いずれも肺から吸入し脳に作用するが、この他にもCO2、COなどの単純な分子構造を持ったものが如何にして脳へ働き、そのメカニズムはいまでもよく判っていない。
  吸入麻酔薬では意識は麻痺しているが、痛みが取れていない不都合があったりして、現在はあまり使われなくなって、注射による局所麻酔薬等により、鎮静、不動、無痛毎の目的に合わせた薬が使用される。
  麻薬は鎮痛、多幸性作用があり、例えばモルヒネは人間の体内での作られる(一例としてランナーズハイとなるエンドルフィン)が、習慣性、依存性を伴う問題が大きい。
  「痛い」という感覚は実際の刺激によるものだけでなく、感情的な一面もあり、「心頭滅却すれば火もまた涼し」の例として、中国文化大革命時、全身麻酔が禁止されハリ麻酔が盛んに行われた事例がある。
  全国の麻酔科医は10,000人、専門医が6,000人で2~300万件の麻酔処置に対応しなければならない現状(人口比で米国の0.4倍)と、病院での死亡率(10万人に対し70人)のなかで麻酔が原因のものが極めて少ない(10万人に対し2人)データの紹介のあと、「麻酔科医は周術期を通して患者の命を守るのが使命」との言葉で締めくくられました。


以上が先生からのお話で、その後参加者といくつかの質疑応答がありました。
  • 麻酔が効かなかった例?
    効かない事はない、効果がないのは量とかの使い方の問題
  • 麻酔効果を本人に確かめる事は可能?
    意識が残る例もあり、現在は麻酔効果を脳波を使ってモニターする事が必須になっているが、麻酔深度の正確な判定は難しい

  閉会に先立ち、次回第15回の案内(グルタミン酸:うまいだけじゃない!)が司会者からアナウンスされました。今回は会場を学外の施設とし、椅子の配置もこれまでと大幅に変更し、カフェの雰囲気に欠けた一面もありましたが、大勢の皆さんにお運びいただき盛況に終えることができました事、厚くお礼申し上げます。

社会連携本部 松浦啓克記

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曽良副学長の挨拶
曽良副学長の挨拶


森田先生
森田先生 「全身麻酔したことある人は?」


会場の様子
会場の様子


会場の様子
会場の様子


参加者の皆さん
参加者の皆さん


森田先生のお話
森田先生のお話


質問に答える森田先生
質問に答える森田先生


会場入口案内ボード
会場入口案内ボード


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