第8回 岡大サイエンスカフェ開催報告 

開催日時:平成20年7月29日(火) 18:0019:45

開催場所:岡山大学中央図書館 5階大会議室

テーマ :分子から生命へ ─化学生命学への挑戦─

講 師 :岡山大学大学院自然科学研究科(工学部)  宍戸 昌彦教授

開催概要:
 最初に、曽良副学長から「3ヶ月前の前回は考古学がテーマであったが、本日は、化学・生命がテーマでご期待に沿える内容です」との挨拶につづいて、今回から協賛をいただくJSTイノベーションブランチ岡山の沖永コーディネータから、JSTの紹介と協賛の趣旨について説明いただきました。

  以下は宍戸先生のお話です。
 始めに「今回のテーマは『分子から生命』であるが、分子の話が多く生命はあまり出てこないので、皆さんからお叱りを受けるかも知れない」との前置きがありました。
 複数の細胞を持つ生き物を取り扱う学問のうち「生物学」は生き物の形、形態、状態、遺伝、進化等を取り扱うのに対し、「化学」では生体分子を構成しているDNAやタンパク質を対象とするものであり、化学者の立場からは、地球上の生き物はたった1つの共通の細胞からできたもので、全ての生き物は同じ様なものとの見解だが、これは生物学者からはお叱りを受けるかも知れない、との学問分野での見方の違いの説明がありました。
生き物の構造体、機能を構成するタンパク質は20種類のアミノ酸から作られ、遺伝を司るDNAは4種のヌクレオシドから作られる。これらの構成分子は地球上のすべての生物に共通のものであり、化学合成もされている。しかし、それらの化学物質から生物である細胞への飛躍には大きなギャップがある。本日の話のテーマとしては、化学により分子(タンパク質、DNA)は作ることが出来るが、分子から細胞を作るのは非常に難しい事と、この大きなギャップを埋める話題が中心である。
 タンパク質はアミノ酸が繋がった構造で、その繋がり方を指定するのがDNAであり、別の表現ではアミノ酸が製品であるのに対し、DNAはその設計図ともいえる。
 1950年代に、シカゴ大学のミラー教授が地球創生期を再現したフラスコ内の気体に対する放電実験を行い10種類のアミノ酸の生成を確認した。この10種類は全宇宙的アミノ酸と呼べるもので、あとの10種類はその後の生物の進化の過程でできたものである。1960年代に南極に落ちた隕石からも、全宇宙的アミノ酸が確認された。
 28年前、宍戸先生は「アミノ酸はどうして20種類なのか、他のアミノ酸を作ってみよう」と思い立ち、研究テーマとして実験を続けた。アミノ酸もその縮合体であるタンパク質も化学合成は出来、このことから合成生命体の可能性を確信し、現在も進行中である。人工生命体の創生には次の3種がある。
1,全く新規の生命体:SFの世界であり、非常に難しい
2,既存生命体(細菌、細胞等)の拡張としての合成生命体:本日のテーマ
3,遺伝子組み換え:社会に許される方向を向いているのではないか(先生の私見)
 遺伝子組み替え作物の危険性についての質問があって、真の危険性はまだ証明された訳ではなく、未知の領域に対する考え方の問題であるとの話をきっかけに休憩時間に入り、その間も先生への質問、主にアミノ酸の種類、数に関しての質問が続きました。

 再開後は、DNAによる遺伝情報に関し、その2重らせん構造と塩基のならび、相補対が再生、修復し易い構造であり、脈々とつながる生命の秘密である説明があった。この2重らせん構造についての発見のエピソードとして、1955年にワトソン、クリック(英)の名前が記されているが、女性のロザリン(英)が発見を先行したが論文で先を越され、失意のうちに35才の若さで息を引き取った。
 DNAの情報は2重らせんでない1本鎖構造のRNAにコピーされ、その塩基のならびの3つ区切りのコドンに転写され、それぞれはアミノ酸に対応する関係にある。このコドンは64種類あり、20種類のアミノ酸に対応しているが、4つ区切りの塩基による新しいコドンの存在をいち早く予測し、5年前に「合成生命体の研究」を申請した段階では、国内ではその意義を理解して貰えず苦い思いをした。今では新聞でも「人工生命体」が取り上げられており、この経験から、極めて先進的な研究は、その提案、発表にはタイミングが必要であることを悟った、との思いが語られた。
 この4つ区切りの塩基によるコドンによりアミノ酸の種類が増え「天然の鼻をあかした」心境で、この成果はまだ細い柱だがこれを大きく育てていきたい。具体的には3年ほど前から、タンパク質に蛍光基を持たせ極微量でも検出可能な蛍光性アミノ酸を用いた「ペプチド創薬パイプライン」により、例えば特定のガン細胞と結合する等、各患者特定の創薬が可能となることを目指している。これはまさにイノベーションであり、夢である。

 以上で先生からの話が終わり、少し時間超過ですが質疑が行われました。質問に対する回答として、「個人向け創薬については技術的ネックない」、「人工合成したアミノ酸は自然界で繁殖する事はない」、「これまでは難しいとされていた『生命』は人工的に作れる」等

 閉会に先立ち、次回サイエンスカフェの予定として、10月24日の農学部松浦健二先生の「昆虫の社会を科学する」の案内が司会者からアナウンスされました。 

 今回は事情により会場が附属図書館の会議室となり、これまでの会場より少し手狭で、事前申込みを、大変心苦しく大勢の方にお断りした次第です。
  当日は、大勢の皆さんにお運びいただき盛況に終えることができました事、参加者の皆さん、学内関係者の皆さんに厚くお礼申し上げます。      社会連携本部 松浦啓克記


(以下サイエンスカフェの様子)


図書館入口の案内板



会場内の案内ポスター



副学長の挨拶



宍戸先生のお話



会場の様子



参加者の皆さん



宍戸先生のお話



会場の様子



参加者の皆さん




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