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  第5回 岡大サイエンスカフェ開催報告   
開催日時:平成19年10月23日(火) 18:00〜19:45
開催場所:岡山大学創立五十周年記念館 大、小会議室
テーマ :有田焼“柿右衛門の赤絵”と“吹屋ベンガラ”の赤色を科学する
−伝統芸術に潜むナノテクの不思議−
講 師 :岡山大学大学院 自然科学研究科長 高田 潤教授(工学部)
開催概要
岡山大学社会連携センターの主催により、「第5回岡大サイエンスカフェ」を五十周年記念館にて開催いたしました。
まず、開催にあたり稲葉機構長(理事・副学長)より、サイエンスカフェの主旨、高田先生の紹介、本日のテーマであるベンガラ色が岡山大学のスクールカラーになっている等の挨拶があり、そして高田教授から今回のテーマ「有田焼“柿右衛門の赤絵”と“吹屋ベンガラ”の赤色を科学する」についてお話がありました。
【本日のカフェでは色々なサンプルもあり、目の保養になれば、との前置きがありました。
有田焼の赤絵と備前焼の緋黷ノ共通の赤色の由来は、いずれもベンガラ(赤色酸化鉄)であり、有田焼、備前焼およびベンガラ粉のサンプルを示し説明いただきました。
ベンガラの産地である県内成羽町吹屋では、公害の関係から現在では生産してないが、有田焼にはいまでも使われており、吹屋ベンガラがなぜ綺麗な赤になるか、科学的に再現する事を目指してきました。
高田先生は、「酸化鉄が好き」から現在の研究を続けておられ、今回のテーマの研究は伝統技術を対象にして「文化と芸術の融合」を行い、新しい学問として「歴史文化化学」とネーミングして、これから広く認知されることの期待が述べられました。
また、インターネット上での「ベンガラ」の検索順位で、Yahoo、Googleとも高田研究室のHPが約10万件中7番目(第1頁目)のランキングになっているとの、ちょっとした自慢話もされました。
酸化鉄の用途としては、黒色、茶色のものは印刷機のトナー、FD、磁気テープ等、各種磁気媒体の他、道路の塗装塗料としても利用されているが、高級な赤色はベンガラであり、顔料として利用されています。ベンガラの語源はインドのベンガル地方で産出されたことからの由来を持つポルトガル語であり、日本では弁柄、紅殻と当て字されています。
赤色のベンガラは木材の防腐効果もあり、また安全性を示す例として、滋賀県の特産品である赤い「仁保こんにゃく」の実物が示され、京都では高級食材との説明がありました。
これに対し参加者の皆さんから「味は?」「加工法は?」「岡山での生産?」「磁石につく?」「鉄分の摂取?」「貧血に効果?」等々、話が盛り上がったところで休憩になりました。

再開後、先ず赤色顔料の歴史的なお話がありました。
欧州にはまだ技術がなかった1650年頃に、日本には有田焼がはじまっており(柿右衛門)、さらに遡ると、縄文時代の遺跡からもベンガラの痕跡が発見されており、欧州に色つけ技術がなかったのは、良い土がなかなか見つからなかったからであり、有田焼の大きな壺が数多く輸出され、いまでも多くの博物館に展示されています。
有田焼の製造工程では素焼き、本焼き、熟成と3回の焼工程があり、特に最後の焼成では850℃程度の比較的低温であることが重要である。ここでは表面の薄いガラス層とそのなかに分布する細かいベンガラ粒子により、下地の乳白色(“にごしで”と呼ばれている)により一層鮮明な赤の効果が出される。ガラス層は薄い程(50μm)、ベンガラ粒子は細かい程(100nm)仕上がりが綺麗になる。そのための細かいベンガラ粒子を得るために、水簸により10〜20年かけた先代からのものを使う。このベンガラ粒子のサイズと色合いとの関係は、高田先生のお父上の研究を引き継ぐ形で続いているものである。
一方、備前焼で藁を巻いた所に出る赤色は、藁の中のカリウムと粘土との反応で発生するもので、焼くのは高温で1回のみ、後の冷却工程での冷却速度が遅い程、綺麗な赤色が生まれる。
吹屋銅山で産出されていたベンガラ原料(ローハ)からは、生産工程で硫酸ガスが発生する事から1965年生産中となり、その後、吹屋村の商家よりベンガラの再現要請を受けた。受け取った5種のサンプルを基に分析を進め、微量の不純物元素(AL)に注目し、その再現に向けて粒子サイズ、AL置換量、熟成温度の条件を詳細に検討した結果、新しい人口吹屋ベンガラを実現した。これらを有田焼の著名な陶工にサンプル提供し、高い評価をいただいた。
等の話がつづきました。
今後の展開としては、ますます厳しくなる鉛規制値に対応して、衣食住の安全安心に向けて、無鉛ガラスに無害のベンガラ釉薬で色づけしたもの、さらには衣服、建材にも適用し高級感も併せ持つ製品の実現が期待されます。
最後の質問コーナーでは、「安価な酸化鉄を純度、粒子サイズを調整し高級なものにする技術は?」「粒子サイズは小さくするほど良いのか?」「水簸とは?」「緋黷ノついて?」等の質問に対し、先生からお答えいただきました。】
以上が高田先生からのお話でした。
柿右衛門の赤絵と備前焼の赤色の由来が科学的に説明され、参加者の皆さんは十分理解されたようでした。赤色の元になるベンガラが、生活の中の色々な所に使用されている事の驚きもありましたし、高田先生には、この日のために有田焼の花瓶など、わざわざ購入して準備いただいた裏事情もありました。
当日、次回サイエンスカフェの講師をお願いしている理学部の本水昌二先生が参加しておられ、次回テーマ「海のちから」のお話のさわりをご説明いただき、皆さんに参加をお願いしました。
今回、参加人員についてはほぼ予定数に達しましたが(外部からの参加者33名)、申込みいただきながら当日不参加になった方が意外に多かったです。特に早期に申込みいただいた方の欠席が多く、1ヶ月以上前からの募集は早すぎる、との教訓のようです。
またアンケートには29名に記入いただきました。内容は別途報告いたしますが、感想、意見は概ね、好意的なものでした。今後の参考にさせていただきます。
今回の催しでは講師の高田先生にはお忙しい中、快くお引き受けいただきました事、並びに計画、準備、設営、撤収等では大勢の事務部門の皆さんにご協力いただいた事、厚くお礼申し上げます。
社会連携センター 松浦啓克 記 |