第10回 岡大サイエンスカフェ開催報告  
開催日時:平成21年1月22日(木) 18:0019:45

開催場所:岡山大学附属図書館 5階大会議室

テーマ :絵図をよむ楽しみ ─池田家文庫絵図をとりあげて─

講 師 :岡山大学大学院社会文化科学研究科(文学部)  倉地 克直教授

開催概要
 最初に、曽良副学長から「岡大サイエンスカフェは今回で10回目、本年度は4回目で、これまでに考古学、化学生物学、昆虫の話等色々な分野のテーマを取り上げており、本日は絵図がテーマでありますので大いに楽しんでください」との挨拶があり、講師の紹介がありました。

 以下は倉地先生のお話です。
 始めに「サイエンスカフェよりサイエンスパブの方が好みにあう」との冗談?でスタートし、テーマである池田家文庫の説明がありました。
 60年ほど前の岡山大学設立時に、池田家にある資料を文庫として寄贈していただいたもので、国内の数ある大名家の資料と比較しても内容が豊富で、史料数では約8万点、絵図は約3千点、和漢の古典籍書が3万冊以上からなる一大コレクションである。
 資料は広く一般に利用して貰えるように、マイクロ化やデジタル化を行っており、これは全国的にも先進的な取り組みとして評価されている。一般公開については、毎年岡山市デジタルミュージアムで絵図展を開催している。また、本図書館に特別展示室を設けており、本日休憩時間を利用して同展示室を見ていただく。
 当日は、絵図に親しんで貰えるように入り口の話しということで、まず「絵図」とはどんなものかの説明の手始めに、地図と絵図の比較の話から始まりました。
 地図が客観的で正確であるのに対し、絵図は主観的で不正確であるというのが一般的な認識であるが、代表的な地図としての国土地理院発行のものでも正確さには限界があり、また時間経過に伴う変化までの4次元情報までは2次元の平面地図では示されないと考えると、この比較はあくまでも相対的なものである。また地図は特定の目的を持たない一般図であるのに対し、絵図は特定の目的のために作られる主観図との比較もあるがこれも相対的な一面があり厳密ではない。
 前近代に作られた古地図は、制作者の空間認識を色濃く反映し個性的で視覚的な表現に特徴があり、絵図と呼ぶ必然性があってこれらのものは「みる」のではなく「よむ」ことにより、そこから情報を得ることができる。

 歴史的にみれば16世紀までは手書図で、例えば荘園単位の小地域での土地利用に関する情報が目的であったが、江戸時代に入ると世界地図を始めあらゆる種類が作られ、さらに刊行により大量に作られるようになり、近代には刊行図が全盛で大衆化が進んだ。
 江戸時代に作られた世界図、日本図、国絵図の史実、背景、幕府所蔵の手書図と民間での刊行による普及の説明があり、その上で手書図の価値序列として、原図(本図)・控図・写図・縮図/略図の説明、また絵図の大きさや見方の比較として、四方展開図、巻子様・折本様の説明がありました。
 
休憩時間を利用して約10分間、同じ階の特別展示室にて絵図の見学が行われました。
 展示室では先生のお話にあった日本全図始め、備前、備前国、児島等地元の絵図が鑑賞でき予定時間が超過しました。

 再開後の話;
 地図は「北が上」との一般化した感覚あるが、その天地上下は江戸時代には固定されておらず、中世の「行基図」や寛永年間の日本図まで「南が上」のものも少なくない。享保年間に平戸で作成されたものは「東が上」で書かれており、天地の方向は制作者の地理認識を反映しているので、注意してみると面白い。
 中世までの日本図は基本的に中国・朝鮮で作られたものによっており、最初に日本人が自前で作った日本図は、徳川幕府が諸国に命じて作らせた国絵図をつなぎ合わせたもので、意見は分かれているが、確実なのは寛永年間に作られたものである。

 展示室にあった慶長の「備前国図」では「北が上」が基本であるが、国絵図の多くは海から見た目線で書かれており、この絵図でも山の向きが海から見た一方向で書かれている。ただし、なかに東から見たかたちに山が書かれているところがあり、そこには制作者の目線が反映している。それは岡山城から西を見た表現であり、岡山城が西方の毛利に備えて築城されたことを示している。絵図の目線に注意してみると、いろいろと発見がある
 絵図は均質な空間を表現されるものでないこと、現実の反映ではなく未来の姿や設計図であったりすること、特別な価値を強調して表わしたりすることがあり、なかには金泥を使用しての強調等もあり、それらを岡山城や県内の各地(下之町、庭瀬、金川、常山、下津井等)を例に示していただいた。
  このように絵図は制作者の意図が反映され、何らかの意味が込められ、それを読み解くことで楽しむ事ができるものなので、今後も開催予定のデジタルミュージアムでの絵図展にも参加してくださいとの呼びかけで締めくくられました。

 先生からの話が終わって参加者からの絵図に関する質問があり、カッコ内の回答頂いた。・国絵図の縮尺は?(日本図作成のため正保期から6/1里=1/2600で統一された)
・ご禁制の時代にどれ位の人が閲覧出来たのか?(国絵図・日本図の原図は幕府所有で、大 名や関係者が写して拡がる。国絵図の控図は藩の所有で大庄屋が写すこともあった)
・絵図には文書が付随されていたか?(文字的付帯情報はないが正保期には土地や交通に関 する台帳が付属して作られた)
・国境争いの実例は?(特に山間地帯は曖昧、備前―備中の国境の例が示された)

  閉会に先立ち今後の予定として、平成21年度は年間6回開催、次回第11回は4月23日に環境理工学部沖陽子先生の「雑草よもやま話」の案内が司会者からアナウンスされました。

 今回はテーマにある池田家文庫が保管されている附属図書館が会場となり、テーブルの配置などの制約からカフェの雰囲気に欠けた点があり、また少し手狭でしたが雨天にも関わらず、遠路東京からの参加者はじめ大勢の皆さんにお運びいただき盛況に終えることができました事、厚くお礼申し上げます。  

                         社会連携本部 松浦啓克記


(以下サイエンスカフェの様子)


図書館玄関の立て看板



曽良副学長の挨拶



倉地先生



参加者の皆さん



参加者の皆さん



参加者の皆さん



倉地先生



資料展示室



資料展示室






日本大絵図
 日本大絵図(寛永年間)↑
 南が上になっている。




備前国図
備前国図(慶長年間)
 山が海側から見た絵になっている。




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